このブログでは、トビリシで暮らしながら出会った音楽やお酒の話を綴っています。今回は、話題の伝記映画を観た夜、無性にレコードに手が伸びた話です。
映画「Michael」を観た夜、無性にアナログ盤が聴きたくなった
正直、まだ胸の奥がじわじわしている。話題になっているマイケル・ジャクソンの伝記映画を観てきた。主演は本人ではなく、マイケルの実の甥にあたるジャファー・ジャクソンだ。それを知った上で観ると、また違った感慨がある。
最初の数分は「やっぱり本人とは違うな」と思っていたはずなのに、ストーリーが進むにつれて、ダンスのキレも表情も、声の震わせ方すらも、不思議とどんどん「マイケルそのもの」に見えてくる。血のつながりが生み出すものなのか、本人のために積み重ねてきた努力の結果なのか。おそらく、その両方なのだろう。スクリーンの中で圧倒的な輝きを放つその姿に、「やっぱりこの人は本物の天才だったんだ」という興奮が、映画館を出たあともずっと頭から離れなかった。
サブスクではなく、あえてアナログ盤を選んだ理由
そんな余韻を抱えたまま迎えた、6月のトビリシの夜。夏の始まりを感じさせる、少し蒸し暑い空気に触れているうちに、無性に「あの音」が恋しくなった。
iPhoneを開いてサブスクで再生する。それも悪くない選択肢だ。だが、今夜はそういう気分ではなかった。部屋の明かりを極限まで落とし、間接照明だけの薄暗い光の中、棚から一枚のアナログ盤を引っ張り出した。選んだのは、マイケル・ジャクソンのベストアルバム『Number Ones』。甥が演じる姿を観たあとだからこそ、今夜は本人の「生の声」をちゃんと聴きたかった。
ずっしりとした12インチの盤をターンテーブルに載せ、静かに針を落とす。プチプチという心地いいノイズの向こうから、自分だけの音楽時間が始まった。

「Don’t Stop ‘Til You Get Enough」で部屋がダンスフロアに変わる
最初に選んだのは、邦題「今夜はドント・ストップ」。クインシー・ジョーンズとタッグを組んだ、黄金期のディスコ・ファンクだ。冒頭、マイケルの囁くような語りと吐息、そこから一気に鮮やかなストリングスとうねるベースラインが弾ける瞬間、思わず鳥肌が立った。
サブスクのデジタルな音もクリアで悪くない。だがレコードの針からスピーカーを通して伝わってくる音は、ベースの響きや生楽器のグルーヴの生々しさがまるで違う。音が平面的ではなく、立体的に部屋の空気を震わせる感覚がある。イントロ一発で、重たかった初夏の夜の空気が、洗練されたダンスフロアに塗り替えられていく。
「Rock With You」の甘くメロウなグルーヴに溶ける
テンションが上がったあと、火照った夜をじんわりクールダウンさせてくれるのが「Rock With You」だ。滑らかなドラムのイントロが聴こえた瞬間、部屋の温度がスッと下がったような、極上のAOR・ソウル空間に切り替わる。
この曲をアナログ盤で聴いていると、音楽を「消費」しているのではなく、音楽を聴く時間そのものを味わっている感覚に満たされる。映画で観た甥による圧倒的な再現の向こう側にある、本人の歌唱力と音楽的センスの深さに、改めて息をのんだ。
針を落とした瞬間の空気感や盤が回る様子は、私のInstagramのリールにてポストしています。夜のBGM代わりにぜひ覗いてみてください。
いつでも聴ける時代だからこそ、あえて針を落とす価値がある
スマホをタップすれば世界中の音楽が一秒で聴ける時代だ。それは本当にありがたい。だが、映画を観て心が震えた夜くらいは、ジャケットから盤を取り出し、丁寧に埃を払い、針が落ちるのをじっと待つ。そんな少し面倒な「儀式」を経て聴くマイケルの音楽は、驚くほど新鮮でエモーショナルに響いた。
スクリーンで観たのは血のつながりが宿した「面影」。だがスピーカーから流れてくるのは、紛れもない本人の声だ。そのコントラストが、不思議と夜をより深くしてくれる。日常のすぐ隣に、最高の夜が待っている。これだからアナログレコードはやめられない。
スマホひとつで何でも聴ける時代だからこそ、たまには針を落とす手間ごと味わってみてほしい。気になった方は、この一枚をチェックしてみてほしい。



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