このブログでは、音楽の好みが大きく広がったきっかけも記録しています。今回は、ある偏見をきっかけに遠ざけていたジャンルに、まさかどっぷりハマることになった話です。
正直、HipHopが苦手だった
かつての私は、HipHopというジャンルが正直あまり得意ではなかった。
ダボダボの服を着て、少しイカつく、やんちゃなヤンキーたちが聴く音楽。どこか「自分とは住む世界が違う文化」という勝手な偏見を抱いていて、自分から進んで聴くことはほとんどなかった。
そんな固定観念を、あるアルバイト先での何気ない会話があっさりと崩してしまうことになる。
イタリアンカフェの店長と、一曲の出会い
当時、私はイタリアンカフェでアルバイトをしていた。音楽の話題になり、ふと「最近Nujabesというアーティストを見つけて」と口にした時のことだ。
店長が「あ、ヌジャベス好きなんだ!それならヒップホップも絶対好きだよ。The Pharcyde(ファーサイド)の『Runnin’』って曲、絶対刺さるから聴いてみて」と教えてくれた。
バイトが終わった後、半信半疑で検索して再生してみた。流れてきたのは、自分が勝手に思い描いていた「イカついヒップホップ」とは全く別物の世界だった。
浮遊感のあるおしゃれなトラック、どこか切なくメロウなメロディライン、そして軽快でポップなマイクリレー。「え、ヒップホップってこんなにめちゃくちゃ格好いいのか」と、頭を殴られたような衝撃を受けた。
背景を知ることで、「音」が「物語」に変わっていく
ファーサイドをきっかけに、そこから自分のディグが始まった。
色々な曲を聴き漁るうちに気づいたのは、ヒップホップの本当の面白さは「背景を知ること」にあるということだった。この曲はどんな古い楽曲をサンプリングしているのか。アーティストはどんな街で生まれ、どんな苦悩や葛藤を抱えてこのリリック(歌詞)を書いたのか。
表面のサウンドだけでも十分格好いいが、その裏にあるストーリーやカルチャーの深みを知れば知るほど、ただの「いい曲」だったはずのものが、血の通った「一つの物語」として響くようになっていった。
かつて抱いていた「怖そう、ヤンチャ」という偏見はいつの間にか消え去り、そこに残ったのはリアルな生き様へのリスペクトだけだった。
ルーツを辿ると、大好きなジャズやR&Bに繋がる快感
さらにディグを進めるうちに、私を決定的に沼へと突き落とす発見があった。それは、ヒップホップのトラックの裏側に、以前から大好きだったジャズやR&Bの要素がぎっしり詰まっているという事実だった。
名曲のバックで流れるメロウなネタ(サンプリング元)を掘り進めていくと、「え、この渋いジャズの名曲をこんな風に再構築してるのか」「大好きなR&Bのグルーヴがここに繋がっているんだ」という奇跡のような発見の連続に出会う。
点と点が線として繋がった瞬間の興奮と鳥肌は、今でも忘れられない。ヒップホップは単体で存在するのではなく、自分の好きだった音楽の歴史そのものを飲み込んで進化してきた文化なのだと知り、さらに深みへとハマっていった。
まさか自分がゴリゴリの90年代を聴くようになるとは
ファーサイドから始まった私のヒップホップの旅は、気づけばさらに深い場所へと続いていた。
あれほど遠ざけていたはずなのに、今では2PacやThe Notorious B.I.G.といった90年代東西抗争の重厚なクラシックや、Warren Gの奏でる極上にメロウなGファンクサウンドに、すっかりどっぷりハマっている。
当時の自分が今のプレイリストを見たら、きっと目を丸くして驚くに違いない。
食わず嫌いをやめたら、そこには広い世界があった
「自分には合わない」と勝手に決めつけて扉を閉ざしていたら、この素晴らしい音楽の世界に出会うことはなかったと思う。
きっかけをくれたカフェの店長にも、素晴らしい音を残してくれたアーティストたちにも、感謝しかない。食わず嫌いをやめて一歩踏み込んでみるだけで、日常を彩る最高のカルチャーに出会えるのだと、ヒップホップが教えてくれた。
今夜もまた、お気に入りのトラックを流しながら夜を過ごそうと思う。
部屋でじっくり聴きたい、沼落ちの名盤たち
音の深みやサンプリングの温もりを味わうなら、やはりレコードで聴くのが一番だ。自分を沼に引きずり込んだ名盤たちを紹介しておく。ジャケットを部屋に飾っておくだけでも気分が上がるはずだ。
The Pharcyde / Labcabincalifornia
「Runnin’」が収録された名盤。インテリアとしても飾りたくなるデザイン。
Warren G / Regulate…G Funk Era
極上にメロウな夜を過ごしたい時に、思わず針を落としたくなる1枚。
2Pac / All Eyez on Me
90年代West Coastヒップホップの金字塔。ずっしりとした存在感がたまらない。



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